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内部統制の4つの目的

経営者が目指すべきことは以下の4つですが、それらは、「資金を無駄なく有効に使う」、「透明性のある経営」、「法令・ルールを遵守した経営」、「会社の財産を私利私欲のために利用しない」という経営者が事業を継続的に安定成長させるために意識すべきことと一致しています。

企業の信頼が問われる

業務の有効性及び効率性

ここでいう業務とは、組織の事業目的を達成するため、すべての組織内の人が継続して取り組む行動のことを指しています。「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」の内容を簡潔にまとめると、業務の有効性とは事業活動や業務の目的が達成された程度をいい、業務の効率性とは組織が目的を達しようとする際に、時間、人員、コスト等の資源が合理的に使用される程度をいいます。

内部統制は、企業の事業活動に役立つものではなくてはなりません。業務の効率が著しく落ちたり、業務に関係ない作業が増えるだけでは、導入の意味がありません。

例えば、自動車メーカー最大手のトヨタ自動車の「カイゼン活動」は、その活動を通して生産業務のプロセスの効率化に貢献していくことから、業務の効率性の向上を目的として内部統制といえます。
また、製造業においては、生産の際にできる限り不良品の発生を少なくするということが命題となっていると思われます。このような歩留率を向上させるための活動は、業務の有効性を高めることを意図したものといえます。

内部統制の導入直後は、業務改善の実施に伴い現場のやり方を変更しなければならず、不平・不満が出てくるでしょう。また、短期的には業務効率が落ちるかもしれません。しかし、中長期的な視点で見れば、事業活動の透明性、安全性、業務の標準化につながり、業務の有効性と効率性を向上させることに役立つものなのです。

財務報告の信頼性

企業が公表する財務諸表及び財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性がある情報の信頼性が確保することを目的とした内部統制です。財務報告は、その企業の活動状態を把握するうえで、極めて重要な情報です。銀行は、その会社の財務情報を検討して、融資の是非や融資額を決定します。また、株主や投資家にとってもその企業の業績を知ることは大変重要です。

財務報告の信頼性を確保することは企業に対する社会的な信用の維持・向上につながることになる一方、誤りが掲載されている財務報告はその企業の関係者に対して損害を与え、信頼性を著しく失墜させることなります。

企業はステークホルダー(利害関係者)に、活動の結果を報告する必要があります。具体的には、一定時点における財産の状態や業績を示すため、さまざまな財務報告書類を作成し、株主(投資家)や債権者、取引先などに対して提供する必要があります。会社法では、少なくとも各事業年度終了後、貸借対照表、損益計算書といった「計算書類」を作成し、株主へ報告するように義務付けています。

アメリカのエンロンやワールドコムの巨額粉飾事件や、日本の西武鉄道、カネボウ、ライブドアなどの虚偽記載に関する問題は、これらの基本的な活動が適切になされていなかったことを示しています。

企業がその財政状態や経営成績に関する情報を公開することは、資本主義経済の根幹を成している活動といえます。内部統制は、その活動を正しく行なうことを目的として構築された仕組みなのです。

事業活動に関わる法令等の遵守

企業活動に関する法令やそのほかの規範の遵守を促進することを目的とした内部統制です。近年の食品偽装問題を例に出すまでもなく、法令や社会規範を遵守せず利益だけを追求した企業は、それに応じた罰則または批判を受け、存続すらできない状態になるケースが少なくありません。

一方、安全基準の遵守や操業の安全性の確保など、真摯な姿勢で法令等の遵守している企業や積極的に問題点の改善に努めている企業は、社会的な信用や評判の向上につながり、ひいては業績や株価の上昇などにも目に見える形で反映されます。このように、企業が存続、発展していくためには、適切な法令順守体制を整備することが不可欠といえます。

たとえ経営者が関与あるいは関知していなくても、その企業のなかの一部の組織やたった一人の従業員が法令違反を起こせば、その責任は企業ひいては経営者に問われることになります。

経営者は、形式的に「法令はきちんと遵守するように」と従業員に伝えるだけでは不十分で、「企業利益の追求のために、社会的な規範や法令に背を向けることは断じて許さない」という確固たる価値観を示し、その教育を行なうことなどによって、法令順守の実効性を高める仕組みを構築して初めて、その責任を果たすことになるのです。

資産の保全

資産の取得や使用、または処分が正当な手続きと承認のもとに行なわれるよう、その保全を図ることを目的とした内部統制です。企業はその事業活動に必要な資産を取得し、事業活動に使用し、最終的には売却または廃棄するという一連の活動は、企業にとって重要な意味を持ちます。

資産の保全が適切になされていないと、投資が無駄になったり、不必要な負債を背負うなど、価値の目減りや競争力の低下を招く可能性があります。その結果として投資家をはじめとするステークホルダーの利益を大きく損ねることになりかねません。したがって、正しい手続きを踏んで、会社の利益のために適切に利用することが求められているのです。

通常、「有形資産」と「無形資産」の二つに分けられて考えられます。まず有形資産とは、例えば現金や預金、在庫、土地・建物、設備などのことです。一方、無形資産の例としては、企業のブランドや特許権などの知的財産が挙げられます。近年では、この無形資産のあり方が活発な議論となっており、生産技術やデザインといった知的財産を含めた資産の保全を図る仕組みが必要とされています。

また、「資産の保全」が対象としているのは、その取得・所有だけではありません。事業活動を展開する中で、所有している土地建物などを本来の価値よりも安く売却すれば損失が発生し、ステークホルダーの利益を損ねることになってしまいます。そのため、企業が持つ資産を維持・活用し、さらには不要になった資産を適切に処分することも重要な項目に含まれています。

これらの目的は、それぞれが独立して存在するのではなく、緊密に関連しています。ある目的を達成するために整備・運用されている内部統制が、他の目的のために構築されたものと共通の体制となったり、互いに補完し合う場合もあります。経営者は、この4つの目的の実現のため、内部統制の6つの基本的要素を整備・運用していく必要があります。

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